現在までの医薬品の主流は分子量が小さな化合物(低分子化合物)を利用したものでしたが、希少疾患などに対する治療薬開発の観点から近年核酸を利用した医薬品(核酸医薬)が注目を集めています。通常、天然型の核酸(DNAやRNA)を外部から導入した場合は生体内の防御システムによって容易に分解されるため、医薬品化する場合は核酸の形を変え、生体内で分解されにくい人工核酸などを利用する必要があります。しかし既存の核酸医薬技術に人工核酸を利用すると、システムそのものが機能しなくなってしまいます。そこで私たちは RNA hacking という新しい技術を提案しました。RNA hacking とは、mRNAの切断や編集をするのではなく、mRNAの形を意図的に作り変えることで、タンパク質が作られにくい状態に誘導するアプローチです。具体的には、mRNAが作る特殊な立体構造 RNA G-quadruplex(rG4) に着目しました。rG4は非常に安定で硬いコブのような構造で、mRNA上に存在するとタンパク質を作る過程(翻訳)が阻害されます。私たちは短い核酸(Staple核酸 )を設計し、病気の原因となるmRNA上でrG4の形成を誘導することでタンパク質への翻訳過程を阻害することを目指しました。実際にStaple核酸を利用することで、病気の原因となる遺伝子のタンパク質発現を抑制することに成功し、心臓肥大のモデルマウスでも薬効を発揮することに成功しました。さらに、人工核酸のみで構成されたStaple核酸でも、同様の薬効を確認でき今後は本技術を利用した医薬品開発を目指します。
Nature Biomedical Engineering
Staple oligomers induce a stable RNA G-quadruplex structure for protein translation inhibition in therapeutics
Yousuke Katsuda , Takuto Kamura, Tomoki Kida, Rinka Ohno, Shuhei Shiroto, Yua Hasegawa, Kaito Utsumi, Yuki Sakamoto, Shinichiro Nakamura, Taishi Nakamura, Kenichi Tsujita, Yusuke Kitamura, Yukiko Kamiya, Hiroyuki Asanuma, Toshihiro Ihara, Masaki Hagihara, Shin-ichi Sato